REIT銘柄に投資している方ならご存知かもしれませんが、REIT銘柄の決算資料では通常の株式会社では使われない用語が多々でてきます。
今回は、大江戸温泉リート投資法人の第4期(2018年5⽉期) 決算資料をもとに、REIT銘柄の用語解説をしてみたいと思います。
目次
大江戸温泉リート投資法人の第4期(2018年5⽉期) 決算資料
https://oom-reit.com/file/ir_library_term-c2628e0febb86bf4aac23dffc50f315db050a13f.pdf
3ページ目:新規取得5物件の運営実績
まずは、3ページ目の「新規取得5物件の運営実績」です。
ここで紹介されているのは、
■大江戸温泉物語 長崎ホテル清風
■大江戸温泉物語 幸雲閣
■鬼怒川観光ホテル
■大江戸温泉物語 きのさき
■大江戸温泉物語 東山グランドホテル
の5物件のみに絞った運用実績です。
この5物件は、
・売買契約締結日:2017年11月9日
・取得予定日:2017年12月4日(引渡決済日)
として同投資法人が取得したため、第4期(2017年12月~2018年5⽉)ではじめて決算資料に加わりました。
(平成29年11月9日 国内不動産の取得及び貸借に関するお知らせ より)
この資料からは、第4期(2018年12月~5⽉)に対応する前年同期比(2017年12月~5月)の数字が読み取れないためサマリーしか確認できませんが、
■客室稼働率は、1.7%低下したが
■ADR(平均客室単価)が、1,166円増加
■RevPAR(販売可能室一室あたり収益)が、485円増加
したため、
■売上高が6億4500万円増加し、33億7300万円となった
ことがわかります。
また、こちらの売上高は各施設の売上高であり、大江戸温泉リート投資法人の売上高ではないことに注意が必要です。
各施設の売上高があげられているのは、賃料の算出(後述する変動賃料など)に使われるためです。
用語解説
key performance indicator の略で、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のことをいう。
ADR(平均客室単価) 販売客室に支払われた平均料金の指標で、客室売上高を販売客室で割って計算します。
ADR = 客室売上高 / 販売客室
RevPAR(販売可能室一室あたり収益)
販売可能室一室あたり収益(RevPAR)は、客室総売上高を販売可能客室の総数で割ったものです。RevPAR は平均客室単価(ADR)とは異なります。ADR が実際に販売された客室の平均料金を示すにすぎないのに対し、RevPAR は稼動していない客室の影響を受けるためです。
客室稼働率 x ADR = RevPAR
5ページ目:新規取得5物件の運営実績(2)
上記の続きで、新規取得5物件のうち、
■S-10︓⼤江⼾温泉物語 ⻑崎ホテル清⾵
■S-11︓⼤江⼾温泉物語 幸雲閣
の実績です。
S-10︓⼤江⼾温泉物語 ⻑崎ホテル清⾵の客室稼働率︓ 74.8%⇒93.9%に変化していることがわかりますが、これにより
■ADR(平均客室単価)が、279円増加ですが、
■RevPAR(販売可能室一室あたり収益)が、6,456円と大幅増加
しています。
なぜRevPAR(販売可能室一室あたり収益)が必要か?
なぜRevPAR(販売可能室一室あたり収益)が使われるかというと、各ホテルで「収益性を比較しやすい」ためです。
例えば、
a. 売上1,000,000円 ÷ 販売できる客室数100/100室 = RevPAR10,000円
b. 売上1,000,000円 ÷ 販売できる客室数 50/100室 = RevPAR20,000円
という結果であれば、より少ない客室で売上を出している【b】の方が収益性が高いと判断できます。
RevPARは、利用がなかった客室の損失分も含めたホテルが所有する全客室1室あたりの売上高が分かる値であり、宿泊部門の収益性を示す指標として他のホテルとの比較も容易となる指標であるため、使われています。
8ページ目:主要指標の推移
8ページ目は、主要指標の推移が紹介されています。
「公募・売出(PO)」とは、既上場企業が新たに発行する株式(公募株式)や既に発行された株式(売出株式)を投資家に取得させることをいいます。
正確には、「PO」は「Public(公開の)Offering(売り物)」の略で、日本語では「公募」と呼ばれます。「公募」とは、「不特定かつ多数の投資家に対し、新たに発行される有価証券の取得の申込を勧誘すること」をいいます。
通常の営業活動に伴うファンドのキャシュフローのことであり、REITの株価尺度に使用される。不動産売却損益を除いたREITの純利益に、減価償却費を加算した金額になる。FFOを利用すると同一基準でREITごとのキャシュフローが比較できる。
FFO=純収益+減価償却費-不動産売却益(+不動産売却損)
英語表記「Loan To Value」の略で、「資産総額に対する負債残高の割合」のこと。
不動産証券化商品では、LTV水準が高くなるにつれて金利上昇リスクが高まります。
英語表記「Net Asset Value」の略で、投資信託の貸借対照表(バランスシート)の資産から負債を差し引いた純資産総額のこと。
この純資産総額を受益権の口数で割ったものが基準価額となります。
11ページ目:第4期(2018年5⽉期)の決算概要
11ページ目は、第4期(2018年5⽉期)の決算概要です。
■売上収益:14億4,267.6万円
■営業利益:7億3,430.5万円
■経常利益:5億7,122.5万円
■当期純利益:5億7,027.3万円
が第4期の実績とわかります。
固定資産を新たに取得したり,増設や増築のための支出をいい,固定資産の原価を構成する。
NOIとは、営業純利益のこと。営業純利益(NOI)とは満室賃料から空室期間の損失や運営費等を差引いた手取り収入のこと。プロの不動産投資家は不動産物件の収入を測る尺度としている。
Distributions Per Unitの略。J-REITの場合は1口あたり分配金のことを指す。J-REITの開示資料ではEPSとして表示されることも多い。
31ページ目:内部成⻑戦略(1)
内部成⻑戦略として、今後の賃料収入のスタンスがまとめれたページです。
■契約期間 20年
■途中解約不可期間 5〜7年
■賃料改定 3年毎
■各施設の修正後GOPの50〜60%程度を賃料
とすることが読み取れます。
また
■第1賃料(固定賃料部分+変動賃料部分)
■第2賃料(本投資法⼈が負担すべき公租公課+損害保険料+その他費⽤)
と別れており、第1賃料の変動部分が各施設の業績と連動して決まっていることがわかります。
Gross Operating Profit ホテル運営の売上(飲食部門等の売上も含む)から販売管理費を含まない経費を除いた収益のこと。「営業総利益」ともいわれる。ホテル事業においては、代表的な指標とされており日本のホテルの場合、平均的には20%程度となっている。
まとめ
今回は、REIT銘柄やホテル業界で使われる用語を大江戸温泉REIT投資法人の決算資料をもとに解説してみました。
私も調べながら決算資料を読み解いていることが多いので、今後も別の銘柄の決算資料でも用語解説をしていきたいかなと思います。
以上です。
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