【書評】日高屋の本を読んで考えた。社会インフラとしての外食

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コラム

日高屋 10人中6人に美味しいといわれたいを読み終えました。

この本で印象的だったのは、日高屋が自らを社会インフラとして地域活性化に貢献する存在と位置づけていることです。

タイトルにもなっている
「10人中6人に美味しいと言われたい」
という言葉も、最後まで読むとかなり意味が変わって見えました。

最初は、よく意味が分からず気になって手に取っていましたが、本を通して読むと、もっと大きな話でした。

毎日でも食べられること、駅前にあって助かること、夜遅くまで営業していること、そこに雇用が生まれること。日高屋は単なるラーメンチェーンではなく、生活の流れの中に組み込まれる存在でありたいのだとわかりました。これは外食を「インフラ」として考える発想で、かなり面白かったです。

以下には私が本書読んだ感想やネタバレが含まれています。ご了承ください。

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この本の面白さは、神田会長の内面の変化を想像しながら読めることだった

今回この本を読んでいて、私が特に面白いと感じたのはここでした。

神田会長は、子どものころから貧しい家庭で育ち、早くから働いていた。キャディの仕事では相手を見て行動を変え、チップをもらう工夫をする。いろいろな職を転々としながら、自分に向く仕事と向かない仕事も知っていく。工場のような流れ作業にはなじめなかった一方で、人を見て動ける仕事には手応えを感じていたように読めました。

そして飲食店に入ってからは、キャッシュフローの良さに強く惹かれていく。この部分は、個人的にかなり腹落ちしました。

会計や金融の本では、キャッシュフローやキャッシュ・コンバージョンの重要性はよく出てきます。けれど、言葉として理解するのと、物語として理解するのは違います。日高屋の本では、飲食が「今日売って、今日現金が入る」商売であること、その手応えがどれだけ大きいかが、理屈ではなく実感として伝わってきました。ここはすごく良かったです。

しかも神田会長は、単に「お金が欲しい」というだけではなかったようにも見えます。もちろん若いころはお金への執着も強かったはずです。けれど、読んでいると途中から、それだけでは説明しきれない感じが出てきます。改善すれば数字が変わる、工夫すればもっと回る、人を見れば売上が変わる。そういう商売そのものの面白さに強く引き込まれていったのではないか。私はそんなふうにも読みました。

これは断定ではありません。あくまで私にはそう読めた、という話です。
ただ、貧しい家庭に生まれ、お金を稼ぐことから始まった人が、そこから「会社を大きくする」「仕組みを広げる」「社会インフラとして機能させる」というところまで進んでいく。その内面の変化を想像しながら読むと、この本はただの創業者本ではなくなります。

日高屋は、ただの逆張りではなく「理にかなった逆張り」をしていた

本を読んでいてもう一つ思ったのは、日高屋の戦い方が単純な逆張りではないことです。

深夜営業、繁華街への出店、駅前立地、ちょい飲み需要の取り込み。表面的には「他社がやらないことをやった」に見えますが、実際には人の流れや利用シーンをかなり見ている。誰がどの時間に、どこで困っているか。そこに合わせて店を置いているように見えました。

だから、ただ変わったことをしたのではなく、人を見て、世の中の流れを見て、そのうえで勝てる場所を選んでいたのだと思います。

このあたりは、子どものころから相手を見て働いてきた経験が、そのまま経営に繋がっている感じがありました。そう考えると、若いころのアルバイト経験や、いろいろな仕事をしたことは、単なる苦労話ではなく、後の経営感覚の土台だったのだと思います。

直近のハイデイ日高の業績はどうか

ここからは投資ブログとして、会社の足元も見ておきます。

ハイデイ日高は2025年2月期に売上高556億円を達成し、その後に中期経営計画を見直しました。新中計「Hiday Challenge」では、2026年2月期の売上高600億円、2030年2月期の売上高750億円、営業利益率10%、店舗数550店(FC含む)を掲げています。

項目 内容
2025年2月期 売上高 556億円
2026年2月期 売上高目標 600億円
2030年2月期 売上高目標 750億円
2030年2月期 営業利益率目標 10%
2030年2月期 店舗数目標 550店(FC含む)

直近の2026年2月期第3四半期累計は、次のような数字でした。

項目 実績
売上高 461.7億円
営業利益 52.9億円
経常利益 53.0億円
四半期純利益 35.6億円

前年同期比では、売上高が12.7%増、営業利益が30.7%増、四半期純利益が29.3%増でした。かなりしっかりした増収増益です。

また、2026年2月度の月次売上高速報では、全店ベース通期累計で売上高111.5%、客数107.1%、客単価104.1%でした。2月末の店舗数は472店です。足元の営業状況も悪くありません。

財務と株主還元はかなり堅い

財務面も見ておきます。

2026年2月期第3四半期時点で、ハイデイ日高は有利子負債なし、自己資本比率は72.2%です。外食企業としてはかなり堅い部類です。

中期経営計画では、2026年2月期から2030年2月期までのキャッシュアロケーションとして、成長投資170億円、株主還元180億円を示しています。既存店改装、新規出店、工場関連投資、DXなどに使いながら、配当性向40%を目標に還元も進める方針です。

配当面では、2026年2月期の会社予想配当は46円、予想配当利回りは4月2日時点でおよそ1.5%台です。

ここははっきりしていて、高配当株として買う銘柄ではないです。
むしろ、

  • 既存店が堅調
  • 出店余地がまだある
  • 財務が健全
  • 還元方針も明確

という意味で、安定感のある成長株寄りとして見るほうが自然だと思います。

この本を読んで、自分の働き方も少し考えた

この本を読んで、自分の中でも考えさせられる部分がありました。

最近は、投資を続けて生活費をある程度まかなえるなら、無理に働かなくてもいいのではないか、という考え方もよく見ます。いわゆるFIRE的な発想です。それ自体は価値観の違いなので、別に否定するつもりはありません。

ただ、私自身はそこにあまり気持ちが向いていないことも、今回あらためてわかりました。

生活できればそれでいい、仕事は最小限でいい、という考え方も合理的です。けれど、それだけで本当に面白いのか。日高屋の本を読んで強く感じたのはそこでした。

神田会長は、同じくらいの年齢のころに店を立ち上げ、そこからさらに挑戦を続けてきた。もちろんそのまま真似できるわけではありません。でも、ただ守りに入るのではなく、自分の力をどこかにかけてみる、その感覚はやはり大事だと思いました。

だから今の自分に引きつけるなら、いきなり何か大きなことをするというより、まずは本業の仕事でちゃんと数字を作ることに向き合ってみたいと思っています。目の前の相手に一歩踏み込んで対応すること。提案をして、結果を出すこと。そういうことを一つずつ積み上げてみる。今はそのくらいの距離感がちょうどいい気がしています。

まとめ

この本は、日高屋の創業物語であると同時に、外食を社会インフラとしてどう成立させるかを描いた本でした。そこには「10人中6人に美味しいと言われたい」という中庸の味の思想があり、立地、営業時間、価格、人材、雇用まで含めて、生活の中に入り込む設計がありました。

そのうえで、私がこの本で特に面白いと思ったのは、神田会長の内面を想像しながら読めたことです。貧しさの中でお金を稼ぐことから始まり、人を見て働くことを覚え、飲食のキャッシュフローの強さに魅力を感じ、そこから商売そのものの面白さに引き込まれていったのではないか。そう考えながら読むと、この本は単なる成功談ではなく、「働くこと」や「挑戦すること」を考え直させる本として読めました。

直近のハイデイ日高の業績も悪くありません。売上は伸び、店舗数は増え、財務は堅い。配当利回りだけを狙う銘柄ではないものの、地味でも強い会社、生活に入り込む会社、長く残る会社として見ると、かなり面白い企業だと思います。

日高屋 10人中6人に美味しいといわれたい

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