ここ数日、私が保有しているREIT銘柄(星野リゾート、KDX不動産、日本ホテル&レジ)がそろって上昇しました。
ポートフォリオの中でも一時含み損が目立っていた銘柄が持ち直してきたことで、「なぜ今REITが好調なのか?」と改めて考えるきっかけになりました。
個別銘柄だけでなく、REIT市場全体を示す「東証REIT指数」や、直近の日米金利差の動きも踏まえると、その背景が少し見えてきます。今回の記事では、直近の数字を整理しながら、今後の日米金利の見通し、さらにREIT以外で金利差の影響を受けやすいセクターについて初心者向けに解説していきます。
目次
きょうの結論(まずここだけ📝)
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東証REIT指数は年初来高値圏。背景には「安心バイアス」=“日米とも急な利上げは来なそう”という安心感があり、分配金利回りの相対魅力が戻っている。
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日米金利差はやや縮小気味(米10年≈4.26%、日本10年≈1.6%台 →差≈2.6〜2.7%)。差が縮む=円高圧力=輸出株に逆風/内需・REITには追い風になりやすい構図。
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ベースシナリオ:米国は9月に0.25%利下げ観測が優勢、年末までに0.25〜0.5%の緩やかな利下げ。日銀は据え置き~年内に+0.25%の可能性。→金利差の縮小方向をメインに想定。
1) 直近の“数字”を素早く整理
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東証REIT指数:1,941.95(8/27終値、年初来高値)
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J-REITの割安・割高感:7月末のNAV倍率0.89倍(長期平均1.09倍を下回る状態が続く)=依然ディスカウント
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米10年金利:直近4.26%付近
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日本10年金利:1.6%台(2008年以来の高水準に触れる場面)
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FF金利(政策金利):4.25–4.50%で据え置き継続中。7月会合でも多数が現状維持を支持
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日銀の姿勢:7/31会合で据え置き。ただしインフレ見通しは上方修正、年内追加利上げの可能性を示唆
“安心バイアス”とは?
市場が「急な再利上げはなさそう」と信じることで、利回り資産(REIT等)に資金が戻りやすくなる心理的追い風のこと。7月以降の米利下げ観測と日銀の慎重姿勢が、この安心感をつくっています。
2) 今後の日米金利シナリオ(6〜12か月想定)
| シナリオ | Fed(政策金利) | 米10年 | 日銀(短期) | 日10年 | 想定確度 | 市場インパクトの要点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ベース | 9月▲0.25%、年末までに合計▲0.25〜▲0.50 | 4.0〜4.4% | 据え置き〜年内+0.25 | 1.3〜1.8% | 中 | 金利差縮小→円やや高/REIT・ディフェンシブに追い風、輸出株は選別 |
| タカ派再燃 | 9月見送り、年末も据え置き | 4.4〜4.8% | 据え置き | 1.6〜2.0% | 低〜中 | 金利差維持〜拡大→円安持続/成長株には逆風、銀行・保険は相対堅調 |
| 景気減速 | 9月▲0.25に加え年末もう一段▲0.25 | 3.6〜4.0% | 据え置き | 1.2〜1.6% | 低〜中 | 金利差縮小×景気懸念→REITは利回り妙味と空室リスクの綱引き |
3) ドル円と金利差:方向性だけ押さえる📉📈
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日米10年金利差とドル円は連動しやすい(縮小→円高、拡大→円安)
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日本10年が1.6%台へ上昇した局面は円高方向のきっかけになりやすい
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差がさらに縮めば「輸入デフレ」効果→日銀の追加利上げ圧力低下という逆回転もあり得る
4) セクター別「金利感応度」マップ(初心者向け🌱)
| セクター | 金利差が縮む時 | コメント(初心者向けの着眼点) |
|---|---|---|
| J-REIT(ホテル・住宅・物流・オフィス) | 🟢 | 借入コスト不安が後退→分配金利回りの相対魅力↑。NAV割れ銘柄は割安修正の余地。ただしオフィスは空室リスクも要確認 |
| 通信(KDDI/NTT等) | 🟢 | 高配当ディフェンシブ。金利上昇一服→バリュエーション上振れ余地 |
| 公益(電力・ガス) | 🟢〜🟡 | 低金利は設備投資の資本コストに優位。燃料価格や規制の影響も併せてチェック |
| 銀行 | 🟡 | 長短金利差が縮むと利ざや改善は限定。ただし国債含み損リスク後退で評価見直しも |
| 保険 | 🟡 | 金利上昇は運用益に追い風だが、縮小局面では中立〜ややマイナス。為替ヘッジコストも勘案 |
| 建設・住宅・不動産仲介 | 🟢 | 住宅ローン金利低下観測は需要下支えに。実需は景気に遅行 |
| 輸出ハイテク(半導体等) | 🟡 | 円高は外貨売上の目減り。一方、米金利低下は「成長株の割引率低下」で支え |
| 米メガテック(例:Apple) | 🟢〜🟡 | 金利低下=DCFの追い風。ただし需要減速や規制は別要因。ドル高/安も海外売上に影響 |
5) J-REITをどう扱う?
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インカム狙いのコア:NAV<1倍&LTV控えめの大型リートを積立で
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値幅狙いのサテライト:ホテル系(インバウンド底堅い)や物流(需給タイト)をイベントドリブンで
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チェックする指標:
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NAV倍率(1倍割れは割安の目安)
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分配金利回りと10年国債の差(エクイティリスクプレミアム)
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借入平均金利・平均残存年数(負債の耐性)
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6) 直近2〜3か月の“観測ポイント”🔭
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FOMC(9月17日):初回利下げ有無と年末までの道筋
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米10年利回り:4%台前半を維持か、3%台後半へ
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日銀会合:据え置き継続か/+0.25%の打診。賃金・物価の表現に注目
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東証REIT指数:NAV倍率の上向き進展に注目
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ドル円:金利差の方向と相関の強弱(崩れる局面もあるため要注意)
まとめ
今回のREIT上昇は「安心バイアス」=急な利上げが遠のいたことによる評価の戻りが主因です。
シナリオの中心は「米はゆるやかに利下げ、日銀は様子見〜小幅利上げ」→金利差は縮む方向。
初心者の方は、NAV倍率/分配利回り/負債耐性という“3点セット”を見ながら、積立+イベント拾いで無理なく攻めるのが安心だと思います。
以上です。




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