【書評】齋藤ジン氏著『世界秩序が変わるとき』を読んで見えた、日本経済の新しい地平と投資戦略

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コラム

今回は、斎藤ジンさんの著書『世界秩序が変わるとき』を読んだ読書メモと、それに基づく自分なりの投資戦略の再整理をしてみたいと思います。

正直なところ、これまでは「日本はもう衰退するだけなのでは?」と、どこかで諦めにも似た気持ちを抱いていたのですが、本書を通じて「今こそ新たなスタート地点に立っているのでは?」という前向きな見方が生まれました。

世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ

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この記事は書籍のネタバレを含みますので、ご了承の上ご覧ください。


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📖 書籍から読み取れた、日本に訪れつつある3つの構造転換

① ルイスの転換点

これは、かつて日本の高度経済成長期にも使われた概念で、余剰労働力が都市部へ吸収され尽くすことで、労働市場が引き締まり、賃金上昇が始まるというものです。

現在の日本でも、非正規雇用の限界や高齢化による労働力不足が進む中で、いよいよこの「ルイスの転換点」に差し掛かっていると言われています。

これにより、

  • 消費者の購買力が増し

  • 企業が価格転嫁を進めやすくなり

  • 緩やかなインフレが起こる

という「経済の好循環」が期待できる状況になっています。

ルイスの転換点

まず補足として、「ルイスの転換点」とは何か?について簡単に説明しておきます。

**ルイスの転換点(Lewis Turning Point)**とは、ノーベル経済学賞を受賞したアーサー・ルイスが提唱した発展段階の理論で、「労働力が余剰で賃金が一定だった状況から、労働者が不足し始め、賃金が上昇し始める転換点」を指します。

具体的には次のような構造です。

  • 農村や非正規雇用などに余剰労働力がある段階では、企業は安価に人を雇えるため、賃金は抑えられる。

  • しかし、その余剰が吸収され尽くすと、労働者の取り合いが起こり、自然と賃金が上昇していく。

  • 結果として、消費が活性化し、企業は生産性を高め、社会全体の成長フェーズが次の段階に入る

つまり、ルイスの転換点は「人口減少=マイナス」と一面的に捉えるのではなく、人手不足が賃金上昇を促し、経済を構造転換させる契機になるというポジティブな面もあるのです。

そして今の日本は、

  • 高齢化と非正規雇用の限界

  • 深刻な人手不足

  • 賃上げ圧力の増大(大企業を中心に)

といった現象が表れており、まさにこの「ルイスの転換点」に差し掛かっていると考えられています。


② 地政学的な優位性の高まり

中国・台湾有事を見据えた米中対立の中で、日本はアメリカにとって極東の安全保障・経済拠点として再評価されています。

これは単なる地理的な位置だけでなく、日本が「西側の経済安全保障を担う国」として戦略的に組み込まれつつあることを意味します。

実際、バフェットが日本の大手商社に巨額投資している背景には、この「地政学×経済」の評価があると感じます。


③ 米国からの注目と外資の流入

本書では明示されていませんが、この構造変化と地政学的優遇により、今後は海外投資家の資金が日本に集まりやすくなるフェーズに入るとも考えられます。


💹 投資戦略としてどう活かせるか?

私自身、これをどうポートフォリオに反映させていくかを考えました。

◆ 為替の見通し:円高にシフト?

日本がインフレとともに利上げに動けば、ドル円は**円高方向(130円台〜)**に振れる可能性が出てきます。一方、地政学リスクや米国の金融政策の変化によっては再び円安方向にも振れるので、レンジでの想定が現実的です。

◆ 内需・インフラ系企業の復権

賃上げにより消費が戻れば、イオン、ニトリ、外食チェーンなど内需系の銘柄が恩恵を受けると考えられます。

また、地政学的なリスクの高まりから、三菱重工やIHIなどの防衛関連企業、さらには再エネ・原発を含むインフラ企業も注目に値します。


💡 商社株は本当に「中間業者」なのか?という疑問

本書を読みながら、「でも、ルイスの転換点で中間業者の立場は厳しくなるのでは?」という疑問も湧きました。価格比較や中抜きが進む現代において、単なる卸業者は淘汰されていく流れがあるのでは?と。

しかし調べていくうちに、大手総合商社(伊藤忠・三菱商事・三井物産など)はすでに“単なる卸”を超えていることに気づきます。

  • 鉱山や資源インフラに上流から投資

  • 食料やエネルギーの需給構造に深く関与

  • 事業会社の経営にも参画

つまり、商社は**「中間でマージンを取る存在」から、「経済構造を設計する側」へ進化していた**のです。

バフェットがここに投資したのも、単なるPBRの低さや配当利回りだけではなく、そうした**「構造的な優位性」**を見抜いた結果なのだと思います。


✍️ 最後に:悲観ではなく、「構造変化の先にある成長」に賭ける

この本を読んだことで、日本に対する悲観論が少し揺らぎました。
もちろん人口減少や高齢化という問題は依然として重くありますが、

  • ルイスの転換点により賃金が上がり

  • アメリカの安全保障の要として日本が再評価され

  • 企業が価格転嫁や成長分野にシフトし

  • 外国資本が日本に流れ込む

という構造変化が確かに起こっている。

そこに新しい投資の視点や、自分自身のキャリアのヒントもあるのではないかと感じました。

以上です。

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下記の書籍も日本の失われた30年について触れており、
合わせて読むと多面的に理解できていいですよ。

日本経済の死角 ――収奪的システムを解き明かす

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