2024年の「家計の金融行動に関する世論調査」(金融経済教育推進機構実施)によると、日本の単身世帯の金融行動には次のような傾向があります。全体の動向と比較しつつ、単身世帯特有の特徴を見ていきましょう。
目次
調査の概要
-
調査期間:2024年6月21日〜7月3日
-
調査対象:
-
単身世帯:20〜79歳の2,500世帯(単身赴任は除外)
-
二人以上世帯:5,000世帯
-
-
調査方法:インターネット調査
単身世帯の金融資産保有状況
単身世帯の金融資産の保有状況を見てみましょう。
【図表1】金融資産保有額(2024年 単身世帯)
項目 | 金額 |
---|---|
平均値 | 989万円 |
中央値 | 362万円 |
金融資産の平均値は989万円ですが、中央値は362万円と大きな開きがあります。これは、一部の富裕層が平均を押し上げていることを示しています。約820世帯(32.8%)が金融資産を保有していませんでした。
金融資産残高の増減状況
単身世帯の金融資産はどのように変化したでしょうか。
【図表2】金融資産残高の増減状況(前年比較)
状況 | 割合 |
---|---|
増えた | 41.5% |
変わらない | 41.1% |
減った | 17.4% |
約4割の世帯が資産の増加を感じており、増加の主因は「株式・債券価格の上昇」(46.9%)、「配当や金利収入」(34.6%)など資産運用が貢献しています。
一方、資産が減少した世帯では、「定例的収入の減少に伴う金融資産の取り崩し」(45.5%)が主な理由となっています。
金融商品の選択基準
単身世帯は金融商品を選択する際、どの要素を重視するのでしょうか?
【図表3】金融商品の選択基準
基準 | 割合(2024年) |
---|---|
収益性(利回り、値上がり期待) | 40.2% |
安全性(元本保証、信用性) | 24.0% |
流動性(現金化の容易さ) | 21.0% |
その他(理解しやすさなど) | 14.9% |
約4割が収益性を重視し、次に安全性、流動性の順となっています。収益性判断の主な情報源は「ウェブサイト」(51.3%)が最多で、インターネットによる情報収集が主流となっています。
リスク商品の保有意識
単身世帯はリスクを伴う金融商品に対してどのような姿勢を示しているでしょうか。
【図表4】リスク商品の保有意識(元本割れ可能性商品)
意識 | 割合(2024年) |
---|---|
積極的に保有したい | 14.2% |
一部は保有したい | 32.4% |
保有したくない | 53.4% |
半数以上はリスク商品を避けていますが、積極的な姿勢や一部保有を考える世帯が徐々に増えています。資産運用に前向きな姿勢の広がりを示しています。
老後の生活に対する不安
単身世帯の老後に対する不安は依然として高い水準です。
【図表5】老後の生活への心配度
心配の程度 | 割合 |
---|---|
非常に心配 | 44.8% |
多少心配 | 33.6% |
心配していない | 21.7% |
約8割が老後を何らかの形で心配しており、その理由として「十分な金融資産がない」(71.5%)、「年金や保険が不十分」(50.8%)、「物価上昇」(37.2%)を挙げています。
日常の決済手段
単身世帯では、決済手段のキャッシュレス化が顕著です。
【図表6】日常の決済手段(1,000円以下の支払い)
決済手段 | 割合(2024年) |
---|---|
現金 | 56.4% |
クレジットカード | 37.8% |
電子マネー | 45.2% |
現金決済は徐々に減少傾向にあり、電子マネーやカード決済の割合が増えています。特に小額の決済において電子マネーが使われる傾向が強まっています。
総括と今後のポイント
単身世帯の金融行動には、資産形成に対する積極性がみられ、情報収集はネット中心、キャッシュレス決済が進んでいる一方で、老後への不安は依然として大きな課題です。
単身世帯が増える今後は、収入を増やす方法や資産形成の具体的な方法を学ぶ必要性が高まっています。
コメント