検索結果にAI要約が出てきて、ユーザーがそこで満足してしまう「ゼロクリック問題」。
この逆風の中で、コンテンツプラットフォームのnoteは業績を伸ばし、逆にYahoo!を抱えるLINEヤフーは検索広告の売上が落ち込んでいます。
この記事では、
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note(5243)の2025年11月期3Q決算
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Yahoo!を含むLINEヤフーの2025年度2Q決算(特に検索広告)
この2つを一次情報ベースで整理し、「AI検索時代に強いビジネスはどこが違うのか?」を掘っていきます。
(noteもLINEヤフーも株は保有していない前提で、フラットに見ています)
目次
1. ゼロクリック問題とnoteのポジション
Valuesとnoteの共同調査では、
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Google検索の約6割が、他サイトに遷移しない「ゼロクリック」
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検索経由の流入と生成AI経由の流入には相関がある
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その中で、生成AI経由の流入が「想定の4倍」と突出して多いサイトがnote
という結果が出ています。note株式会社
理由はシンプルで、
・そこでしか読めない一次情報が多い
・1本あたりの深掘り度が高い(AI要約では物足りない)
からです。
E-E-A-T(経験・専門性・権威性・信頼性)が高い長文コンテンツが多く、AIが要約しても「元記事を読まないとわからない部分」が残る。その結果、AI経由でもクリックされやすい構造になっている。
この仮説が正しいかどうか、実際の決算数字を見て確かめます。
2. note(5243)の業績ハイライト:成長加速+利益水準のステップアップ
2-1. 2025年11月期3Q累計の数字
単位:億円
| 項目 | 2025年11月期 3Q累計 | 2024年11月期 3Q累計 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 30.46 | 24.61 | +23.8% |
| 調整後EBITDA | 1.67 | 0.56 | +199.3% |
| 営業利益 | 1.27 | 0.34 | +271.3% |
| 経常利益 | 1.39 | 0.50 | +179.2% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 2.12 | 0.47 | +344.2% |
※決算短信・説明資料から百万円を億円換算Yahoo!ファイナンス+1
3Q「単体」でも、
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売上高:10.75億円(前年同期比+27.2%)
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営業利益:1.03億円(同+366.9%)
と、売上も利益もかなりの伸び。note(ノート)
2-2. 通期予想は大幅上方修正
2025年11月期通期の会社予想は、以下の通り。note(ノート)+1
単位:億円
| 項目 | 新予想 | 旧予想 | 増減 | 2024年11月期 実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 41.25 | 40.10 | +1.15 | 33.12 | +24.5% |
| 営業利益 | 2.00 | 0.60 | +1.40 | 0.52 | +278.5% |
| 当期純利益 | 3.30 | 1.10 | +2.20 | 0.98 | +233.5% |
売上は+20%台後半、営業利益は3倍近いペース。
純利益は、繰延税金資産の計上も効いて「営業利益以上に増える」形です。note(ノート)
2-3. KPI:ユーザー・クリエイター・コンテンツが揃って伸びている
3Q時点の主要KPI(対前年同期比)は、だいたいこんな感じ。note(ノート)+1
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会員登録者数:約1,052万人(+23%)
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累計ユニーククリエイター数:約188万人(+30%弱)
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公開コンテンツ数:約6,400万件(+33%)
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note四半期GMV:55.37億円(+27%)
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note pro ARR:6.48億円(+24%)
つまり、
「ユーザー数」「クリエイター数」「作品数」が全部20〜30%で伸びていて、
それに合わせて売上・利益もちゃんと伸びている
という、教科書的にきれいな成長曲線です。
3. LINEヤフー(Yahoo!)の決算:検索広告は2桁減収
ここからが本題で、同じ「検索×AI時代」を生きているYahoo!側の数字。
Yahoo!を運営するLINEヤフー株式会社(4689)の、2025年度第2四半期(4〜9月)の補足資料からメディア事業を抜き出すと、以下の通りです。Lycorp+1
3-1. メディア事業のP/L(2025年度2Q)
単位:百万円
| 項目 | FY2024 2Q | FY2025 2Q | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 180,370 | 179,879 | -0.3% |
| うち 広告売上 | 140,982 | 141,680 | +0.5% |
| 検索広告 | 49,649 | 43,116 | -13.2% |
| アカウント広告 | 30,242 | 35,099 | +16.1% |
| ディスプレイ広告 | 61,089 | 63,465 | +3.9% |
| 売上総利益 | 147,868 | 147,397 | -0.3% |
| 販管費 | 93,745 | 96,776 | +3.2% |
| 調整後EBITDA | 70,975 | 68,017 | -4.2%(マージン39.3%→37.8%) |
広告売上全体は微増ですが、検索広告だけがきれいに2桁減収。
アカウント広告(LINE公式アカウントなど)とディスプレイ広告が伸びて、全体の数字をなんとか支えている構図です。
3-2. 検索広告の増減要因
検索広告だけを見ると、
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売上収益:496億円 → 431億円(-11.0%)
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内訳:
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Yahoo!・LINEヤフー面:433億円 → 385億円
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パートナーサイト面:63億円 → 45億円
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という減り方をしており、減少要因として
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「広告需要の鈍化」▲66億円
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「パートナーサイト面の減少」▲17億円
などが挙げられています。Lycorp
つまり、
・検索という入口はまだ使われているが
・検索結果ページ上で完結するケースが増え
・そこに載る検索広告の価値が目減りしている
という話と整合的な数字になっている。
3-3. 会社全体としては増収増益
一応フェアに書いておくと、LINEヤフー全社で見ると、
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売上収益:4,622億円 → 5,057億円(+14.0%)
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営業利益:658億円 → 1,194億円(+81.4%)
と、増収増益ではあります(一時要因を除いた実力ベースでも営業利益+14%)。Lycorp
ただ、メディア事業、とくに検索広告は明確に逆風というのがポイント。
4. note vs Yahoo!:AI検索時代の「勝ち筋」の違い
同じインターネット企業でも、
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note:AI経由の流入が「想定の4倍」
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Yahoo!:検索広告が2桁減収
という真逆の絵になっている原因を、ざっくり整理します。
4-1. ビジネスモデルの違い
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Yahoo!(LINEヤフー・メディア事業)
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検索結果ページやポータルトップに広告を出して稼ぐモデル。
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ユーザーが「クリックする前」、つまりSerps上での滞在が収益源。
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note
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クリエイターのコンテンツを読んでもらい、有料課金・サポート・SaaSなどで稼ぐモデル。
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ユーザーが「読みに来た後」、コンテンツの中身が価値の源泉。
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AI要約が強くなるほど、「クリック前の広告価値」は削られやすい。
逆に、「要約を読んでも物足りないから記事まで行く」タイプのコンテンツは、AIにとってむしろ入口を増やしてもらっている状態になります。
4-2. 一次情報 × ネットワーク効果
noteは、
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1000万人超の会員
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180万人超のクリエイター
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6,000万本超のコンテンツ
という規模の一次情報プラットフォームになりつつあります。note(ノート)+1
一方、Yahoo!の検索結果は、
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自社のニュースや公式情報もあるものの、多くは外部サイトへの「ゲート」的な立場。
AI検索が「ゲートの手前」で情報を完結させ始めると、
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ゲートに貼っていた広告の価値が落ちる(Yahoo!の検索広告)
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ゲートの向こう側にある一次情報の価値は逆に上がる(noteのような一次情報サイト)
こういう構図になっていると考えていい。
5. 投資家としてどこを見るか
5-1. noteを見るときの着眼点
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売上成長率が20〜30%台を維持できるか
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GMVとnote pro ARRが綺麗に積み上がり続けるか
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生成AIの普及が、今後も「コンテンツと読者のマッチング改善・流入増」に効き続けるかnote(ノート)
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利益率がどこまで上がる余地があるのか(現状は売上40億円規模で営業利益2億円程度のイメージ)
成長株なので、バリュエーションは常に高めに振れやすい。
どこまで「クリエイター経済のインフラ」としてスケールできるかが勝負です。
5-2. LINEヤフー(Yahoo!)側のチェックポイント
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メディア事業の中で、検索広告の減収をどこまで他の広告(アカウント・ディスプレイ)が埋められるか
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AI検索・AIポータル化の流れの中で、自社サービスにどうトラフィックを戻すか
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全社としてはコマースや金融・海外など、他のセグメントが成長エンジンになっているので、「検索広告依存の体質」からどこまで脱却できるか
検索広告は構造的に逆風を受けているので、
「以前と同じ回復を期待してしまうと危ない」
くらいで見ておいた方が現実的だと思います。
6. まとめ──AI検索で割を食うのは誰か
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noteは、2025年11月期3Q時点で**売上+23.8%、営業利益+271%**と、成長・収益性ともにステップアップ中。Yahoo!ファイナンス+1
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一方、Yahoo!を含むLINEヤフーのメディア事業では、**検索広告売上が前年同期比▲13.2%**と2桁の減収。広告需要の鈍化とパートナーサイト面の落ち込みが要因として示されています。Lycorp+1
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AI検索が普及すると、「検索結果ページに載る広告」は価値を削られやすく、「そこでしか読めない一次情報を持つサイト」はむしろAI経由でトラフィックを増やしやすい。
投資家目線でざっくり言うと、
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**検索エンジンの“手前”で稼ぐビジネス(広告)**は逆風
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検索エンジンや生成AIの“先”にある一次情報プラットフォームは追い風
この構図が、noteとYahoo!の決算差にかなり素直に出ていると見ていいでしょう。
今後も、
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「どのビジネスモデルがAI検索の進化で得をするのか」
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「どの売上がゼロクリックに食われていくのか」
という視点で決算を見ていくと、ただの数字の羅列よりずっと腹落ちしやすくなるはずです。



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