メタプラネット（3350）に何が起きたのか？ ―「基準日再設定」と「mNAV割れ」、そして株価急落の背景

コラム

2025.10.16

はじめに

2025年10月16日、メタプラネット（3350）が「臨時株主総会の基準日を取り消し、改めて設定する」と発表しました。
あわせて、同社の時価総額が保有するビットコインの価値を下回る、いわゆる「mNAV割れ」も話題になっています。

そのせいもあってか株価が大きく下落しています。

メタプラネットの過去1年間の株価

この記事では、最新の動きとともに、初心者にもわかりやすいように専門用語をその場で解説しながら整理します。

メタプラネットが発表した「基準日再設定」とは

もともと10月24日を株主総会の基準日（＝「誰が議決権を持つ株主か」を決める日）としていましたが、
この日付を取り消し、新たに10月31日を基準日にするとのことです。
株主総会で議決権を持つ株主は、この基準日に株を保有している人になります。
ただし、今回の発表では「何を話し合うか（議案）」や「いつ開催するか」はまだ明らかにされていません。

こうした変更は、会社側が議案やスケジュールの調整をしているサインとも受け取れます。
投資家の立場から見ると、「何か大きな決定を控えているのでは？」という不安が出やすい局面です。

話題の「mNAV割れ」ってなに？

メタプラネットのニュースでよく出てくるのが「mNAV（エムナブ）」という言葉です。

まず、NAV（純資産価値）とは「会社の資産から借金を引いた“本当の価値”を1株あたりに換算したもの」。
一方でmNAVは、「市場評価ベースのNAV」で、
時価総額（株価×発行株数）を会社の資産価値で割った数値のことです。

mNAVが1より大きい場合は「市場が会社を資産以上に評価している」状態。
逆にmNAVが1未満の場合は「会社の株価が資産価値を下回っている」状態、つまり“割安”に見えます。
ただし、「割安だからお得」とは限りません。
実際には、資本政策の不透明さや、信頼性・リスク要因などが「ディスカウント（割引）」として株価に反映されている場合もあります。

ビットコインとの関係

メタプラネットは、もともとホテルやIT事業を展開していた企業でしたが、
近年は「ビットコインを保有する企業（トレジャリー企業）」として注目を集めています。
つまり、同社の企業価値はビットコイン価格に強く連動しているのです。

そのため、ビットコイン相場が上がると株価も上がりやすく、
逆に下がると連動して株価も落ちやすい傾向があります。
この構造を知らずに「株式」として見てしまうと、
実質的には**“ビットコインの値動きを株で追う投資”**をしているのと近い状況になります。

希薄化リスクとは？

今回のように「株主総会の基準日を再設定」する背景には、
新しい株の発行や資本政策の変更といったテーマが関係している可能性もあります。

ここで出てくるのが**希薄化リスク（きはくかリスク）**です。
これは、会社が新しく株を発行したときに、既存の株主の持ち分が相対的に減ってしまうことを指します。
たとえば、100株の会社がさらに100株発行すると、
あなたの持つ1株の割合（＝会社に対する持ち分）は半分になってしまうということです。

そのため、臨時株主総会の「議案」が何かは非常に重要。
もし新株発行や資本構成の変更が議題なら、株価への影響も大きくなります。

投資家が注目すべきポイント

議案の内容：増資やワラント発行など、株主の価値を左右する決定があるか。
ビットコイン価格：企業価値と連動しており、株価の先行指標になりやすい。
mNAVの推移：1を下回っている理由を考えることが大切。
新株や希薄化の可能性：発行条件や頻度によって1株あたりの価値が下がることも。
短期的なイベントリスク：臨時株主総会や資本政策の発表など、値動きが大きくなりやすい。

ここから得られる投資の教訓

メタプラネットのような銘柄は、**「配当をもらう株」ではなく、「値動きを取る株」**です。
保有資産（ビットコイン）と市場心理で上下するため、安定的な配当収入を求める投資家には向きません。
逆に言えば、「ボラティリティ（値動きの激しさ）」を理解したうえで短期的な値幅を狙う投資なら成り立ちます。

長期投資の観点では、次の3点が教訓になります。

① キャッシュフロー重視：配当を生み出す現金収入の有無を確認する。
② リスクの中身を見極める：割安に見える背景には理由がある。
③ イベント株には冷静さを：臨時総会などの発表前後は値動きが荒くなりやすい。

まとめ

今回のメタプラネットの動きは、「株主総会に向けた準備の変更」と「資産価値と株価の乖離」が同時に話題となったケースです。
ニュースを見たときに、**「基準日」「mNAV」「希薄化」**といった用語を理解しておくと、
投資判断の精度が大きく上がります。
高配当株中心の投資をしている人にとっても、
こうした“資産連動型の企業”を知っておくことは、市場全体を読む力につながります。